少女たちのメンタルヘルスにおける静かな危機

Nature Human Behaviour誌の最近の論文「The silent crisis in girls’ mental health少女たちのメンタルヘルスにおける静かな危機」(Naritaら, 2025)を

読んでまとめてみました。

近年、思春期の女の子たちの心の不調が、世界的に増えていることが分かっています。

日本でも、その傾向は例外ではありません。厚生労働省の統計によると、

2024年、20歳未満の自殺者数で女子が男子を上回るという、これまでにない事態が起きました。

10年前は男子の方が2倍以上多かったため、これは深刻な変化といえます。

💭 なぜ女の子に心の不調が増えているのか?

最新の研究では、いくつかの背景が指摘されています。

1️⃣ 学校でのプレッシャー

勉強も友人関係も、すべて「ちゃんとやらなきゃ」と頑張りすぎてしまう。

女の子は女性そのものの伝統的な役割に加え、社会的にも学業的にも成功しなければならないといった「スーパーウーマン」という理想に直面しており、

完璧を求められる風潮が強く、特に女の子に大きな負担となっています。

2️⃣ SNSやインターネットの影響

スマートフォンやSNSでつながることは便利ですが、他人と比べて落ち込んでしまったり、誹謗中傷に悩んだりすることもあります。

研究では、ネットの使いすぎが抑うつ気分と関係する傾向が、女の子でより強いことが報告されています。

3️⃣ 性的なハラスメントや暴力

学校やネット上での性的な嫌がらせ、暴力は、女子に偏って多く起きています。

オンラインでの性的搾取(写真の拡散など)も問題となり、心の傷を残すことがあります。

4️⃣ 外見への不安

「もっと痩せたい」「かわいくならなきゃ」という思い込みが強まり、食事制限や摂食障害につながるケースも増えています。

近年、思春期女子の摂食障害は大幅に増加しており、深刻な問題になっています。

5️⃣ 思春期の早期化

現代の女の子は、思春期の始まり(胸の発達)が昔より早まっています。

早熟であることが、心の不安定さや抑うつのリスクを高めることも指摘されています。

🌱 どうすれば、この流れを変えられるのか?

今後は、示唆された要因を因果媒介分析や交互作用分析を用いて厳密に検討し、

エビデンスに基づいた予防策や支援策につなげていくことが大切だと述べています。

この「ジェンダー・メンタルヘルス格差」を縮めるには、大胆な政策、教育改革、そして若者自身のリーダーシップが必要である。

とも述べられています。

最近、当院にも10代の患者さんからの相談が増えています。

「眠れない」「気分が沈む」「学校に行きたくない」——

そうした悩みは、特別なことではありません。

心のSOSを感じたとき、早めに相談することが回復への第一歩です。

吉本メディカルクリニックでは、オンライン診療も行っていますので、安心してご相談ください。

🌸男の子たちはもちろん 女の子たちも「(体調を崩してまで)がんばりすぎなくてもいい」と思える社会を、私たちは一緒に作っていきたいと思っています。

📘 参考文献

Narita Z.C., Yamasaki S., Knowles G., Kasai K., Nishida A.

The silent crisis in girls’ mental health.

Nature Human Behaviour (2025). [DOI: 10.1038/s41562-025-02322-2](https://doi.org/10.1038/s41562-025-02322-2)

【記者発表】思春期女子のメンタルヘルス悪化と拡大する性差

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