「やっぱり何も起きなかった」──2025年7月5日の災害予言と不安の心理
2025年7月5日、大地震が来る、災害が起こる――そんな予言がSNSや動画配信サイトを通じて一部で拡散され、実際に不安を感じた方も多くいらっしゃいました。
そして、7月6日。
私たちは普段通りの生活を送っています。
(トカラ列島の群発地震もありますが、2025年6月21日からすでに起こっていました)
では、この「何も起きなかった」という事実を、どのように心の整理につなげればよいのでしょうか?
本記事では、認知行動療法(CBT)の視点から、不安への対処法を解説します。
■ なぜ「予言」に不安を感じてしまうのか?
人の脳は、“悪い予感”や“危険情報”に対して過敏に反応する傾向があります。これは私たちの祖先が自然災害や外敵から身を守るために進化してきた結果です。
そのため、根拠があいまいな予言であっても、
「万が一当たったら?」
「もしかして今回は本当かもしれない」
と感じ、現実以上に不安が膨らんでしまうのです。
さらに、ネット情報はアルゴリズムの影響で「不安をあおる情報ばかり」が目につきやすくなっています。
それにより、「やっぱり本当かもしれない」と不安が強化されていきます。
■ 認知行動療法(CBT)とは?
CBT(Cognitive Behavioral Therapy:認知行動療法)は、「考え方」と「行動」に注目し、心の不調を改善する精神療法です。
特に不安症やパニック障害、強迫症などにおいて効果が高いとされており、世界中で用いられています。
CBTでは、不安や恐怖を感じたときに、
「その不安は、どれくらい現実的か?」
「実際にどうなったか?」
という視点で、自分の思考を検証していきます。
■ 7月5日という“実験結果”
2025年7月5日は、「もし本当に何か起こったらどうしよう」という不安が社会に広がった一日でした。
しかし、実際には――何も起こりませんでした。
この「結果」こそが、ひとつの「反証」になります。
「やっぱり何もなかった」
「あの不安は、結果的に現実にはならなかった」
という気づきが、脳に“修正された認知”として蓄積されていくのです。
■ 非現実的な不安と、どう向き合えばいいか?
CBTでは、不安への向き合い方として以下のステップを活用します。
① 不安に気づく
「また不安になっているな」と気づくことが第一歩。
② 考えを書き出す
「地震が来るかも」「死ぬかも」など、頭に浮かんだことを紙に書き出してみましょう。
③ 根拠を検討する
「それは事実なのか?」「証拠はあるか?」「前にも同じ不安があって、実際はどうだったか?」と問いかけてみます。
④ 結果を見る
今回は実際に“何も起きなかった”という結果があります。これは、未来の不安を過度に信じないための強力なデータになります。
■ 繰り返す不安にお悩みの方へ
SNSやYouTubeで流れる不確かな予言や都市伝説は、現代版の「不安製造機」とも言える存在です。
そして、それらに心を振り回されてしまう方は少なくありません。
「自分だけが過敏なのでは?」
「こんなことで不安になる自分はおかしいのでは?」
そう感じてしまう方もいるかもしれませんが、まったく異常なことではありません。
大切なのは、不安に“飲み込まれる”のではなく、“俯瞰して距離を取る”ことです。
■ 吉本メディカルクリニックではCBT的アプローチを取り入れています
港区・青山の吉本メディカルクリニック(精神科・心療内科)では
不安症、パニック症、強迫症、適応障害などに対し、
短い診察時間でも認知行動療法的なアプローチをベースにした診療も行っています。
・ SNSで不安を感じやすい
・不吉な予感に過剰に反応してしまう
・いつも最悪のシナリオを想像してしまう
といったお悩みがある方も、どうぞお気軽にご相談ください。
■ まとめ:「やっぱり何もなかった」は、強力な“こころの証拠”
2025年7月5日の予言は、現実には起こりませんでした。
この事実をただ流すのではなく、「あのときの不安は、思い込みだったかもしれない」と心の中で振り返ることが、次の不安に立ち向かう力になります。
不安は消えなくても、「不安のトリセツ(取扱説明書)は、自分で読み込んで自分自身で操作できる」のです。