「病は気から」は本当だった?脳が免疫を操る仕組み
皆さん、こんにちは。精神科医の吉本です。
外来で「前向きな気持ちを考えられるような工夫」を説明することがありますが、
心のどこかで「そんな精神論だけで体が良くなるのかな?」と疑問に思われた方もいるかもしれません。
しかし、先日Nature Medicine誌に掲載された研究に、
私たちの「期待」が実際に「免疫力」をブーストさせるという、非常に興味深い研究成果が掲載されました。
今日はその内容を分かりやすく解説します。
脳をトレーニングして「抗体」を増やす
イスラエルのテルアビブ大学で行われたこの研究では、85人のボランティアに「脳のトレーニング」をしてもらいました。
自分の脳活動をリアルタイムでモニターで見ながら、「特定の場所(報酬系ネットワーク)」を活性化させる練習です。
参加者は、旅行の思い出や将来の希望など、自分なりのやり方を駆使して脳を動かすコツを掴んでいきました。
その結果、驚くべきことが分かったのです。
・ワクチンの効果がアップ
報酬や動機づけに関わる中脳辺縁系、とくに腹側被蓋野(VTA:Ventral Tegmental Area)という報酬系を活性化させるトレーニングをしたグループは、
その直後に打ったB型肝炎ワクチンの抗体レベルが有意に高くなっていました。
・「ポジティブな期待」が鍵
単なる「楽しい」「愛している」という感情ではなく、「将来に対する希望に満ちた期待」が、この免疫反応と強く結びついていた点です。
反対にワクチンに抵抗がある方はワクチンの効果が少ないかもしれません。
ただ、ワクチンに対する考え方が変わってくれば、効果を感じられるかも、です。
プラセボ効果の正体が見えてきた
これまで「プラセボ効果(偽薬なのに効いてしまう現象)」は、どこか科学的ではない、気休めのようなものだと扱われてきました。
精神医療としての私の経験では、不安を感じた時に安定薬を服薬していた患者さんが、
ラムネやサプリなどを飲んでも不安が軽くなる場合があります。
これもプラセボ効果です。
しかし、今回の研究は、「良くなるという期待」が脳の報酬系を刺激し、
それが具体的な免疫システムに司令を出しているという「目に見える証拠」を提示したことになります。
ストレスや不安で免疫が下がることはご存知だと思いますが、
逆に「ポジティブな期待」を意識的に持つことで、免疫系を能動的に強化できる可能性が見えてきました。
今後、がんの免疫療法や慢性炎症の治療において、薬だけでなく「脳へのアプローチ」が組み合わされる日が来るかもしれません。
「きっと良くなる」と信じる力は、単なる気休めではなく、あなたの中に備わった立派な「治療ツール」なのです。
今日から少しだけ、未来への小さな希望をイメージする時間を作ってみませんか?
もっと詳しく知りたい方や、相談したい方は、ぜひお声がけください!
参考
Upregulation of reward mesolimbic activity and immune response to vaccination: a randomized controlled trial(nature medicine)
The placebo effect: A new study highlights the brain’s role in immune health(The Economist )