【医師が解説】抗精神病薬、安定剤、睡眠薬…アメリカ渡航時に「持って行ける量」の違いと注意点
投薬証明書、診断書などが必要。機内持ち込みにて90日分または50日分まで。郵送はできません。
海外出張や留学、旅行などの予定が決まった患者さんから、外来でよくこんなご質問をいただきます。
「今飲んでいるお薬は、そのままアメリカに持って行けますか?」
「足りなくなったら、あとから実家から郵送してもらうことはできますか?」
結論から言うと、アメリカでは自分で飛行機に持ち込むことは可能ですが、お薬の種類によって「持ち込める量」に大きな違いがあります。
また、後から郵送で送ることは原則できません。
せっかくの海外渡航。税関でトラブルになったり、現地でお薬が切れてパニックになったりしないよう、精神科のお薬を持ち込む際のルールを分かりやすく整理しました。
1. 自分で持ち込む場合のルール:お薬の種類で「日数」が違います!
アメリカの税関国境保護局(CBP)や食品医薬品局(FDA)の規則により、お薬の「依存性の高さや乱用のリスク」に応じて、持ち込める上限が変わります。
① 抗精神病薬・気分安定薬(リチウム、レキサルティ、エビリファイなど)
持ち込める量:最大90日分(3ヶ月分)まで
抗精神病薬、気分安定薬はアメリカでも「規制物質」には指定されていません。そのため、通常の処方薬と同じ扱いになり、滞在期間に必要な分(最大90日分)をそのまま手荷物で持ち込めます。
② 抗不安薬(安定剤)(ソラナックス、デパス)・睡眠薬(マイスリー、デエビゴなど)
持ち込める量:原則「最大50回分」まで(⚠️要注意!)
精神安定剤や睡眠薬の多くは、国際条約やアメリカの法律で「規制物質(Controlled Substances)」に指定されています。
乱用を防ぐため、海外から持ち込む場合は、日本の医師の証明書があっても原則50回分(50錠など)が上限となります。「レキサルティと一緒に3ヶ月分持っていこう」と思っても、睡眠薬や安定剤は弾かれてしまうリスクが高いので本当に注意が必要です。
③ロヒプノール、サイレース(一般名:フルニトラゼパム)の持ち込みは、原則として一切禁止
米国に持込む事は出来ません。 もし持込んだ場合は重い刑罰が課されます。
2. アメリカへお薬を持っていく時の「3つの鉄則」
どのお薬を持ち込む場合でも、税関をスムーズに通過するために以下の3点は絶対に準備してください。
「英文の薬剤証明書」を必ず持参する
当院(または主治医)が発行する、成分名や用法用量が英語で書かれた証明書を必ず薬と一緒に携帯してください。
薬は「元の状態(処方されたまま)」で
荷物を減らしたいからと、ピルケース等に詰め替えるのはNGです。ご自身の名前や薬名が分かるアルミシートや薬袋のまま持っていきます。
必ず「手荷物」に入れる
ロストバゲージ(荷物の紛失)を防ぐため、また税関でパッと提示できるように、スーツケースではなく必ず機内持ち込みバッグに入れてください。
3. 日本からの「郵送」は絶対にできません
「とりあえず30日分だけ持って行って、足りなくなったら日本の家族に郵便(EMS)で送ってもらおう」
――これは絶対にやめてください。
アメリカは海外からの処方薬の郵送を厳しく禁止しています。送っても100%に近い確率で税関で没収・破棄されます。現地でお薬がゼロになってしまう一番危険なパターンですので、郵送は当てにしないでください。
4. 3ヶ月以上の長期滞在になる場合は?
日本から持ち込める量には制限があるため(抗精神病薬は90日分、睡眠薬等は50回分)、長期滞在の場合はアメリカ現地の病院で処方してもらうのが基本ルートになります。
渡航前:
主治医に、現地(アメリカ)の医師宛ての「英文の紹介状(診療情報提供書)」を作成してもらいます。
渡航後:
日本から持参したお薬がなくなる前に、アメリカの精神科やクリニックを受診します。紹介状を提出し、現地でお薬(※レキサルティの現地名は Rexulti です)を処方してもらってください。
主治医からのメッセージ
精神科のお薬は、ご自身の判断で急にストップしてしまうと、体調を崩したり症状がぶり返したりする原因になります。
慣れない海外生活を素晴らしいものにするためにも、お薬の準備は万全にしておきましょう。
なお、「英文の証明書」や「英文の紹介状」の作成には、通常1〜2週間ほどお時間をいただいております。
アメリカへの渡航が決まりましたら、スケジュールに余裕を持って、お早めに外来でご相談くださいね。一緒にしっかりと準備を整えていきましょう!