二日酔いはなぜ加齢とともに悪化するのか?
年齢とともに二日酔いがつらくなる医学的理由
――「弱くなった」のではなく、加齢による変化のため
「若い頃は平気だったのに、最近は少し飲んだだけで翌日がつらい」
今回は、 The Economistが紹介した研究も踏まえながら、なぜ年齢とともに二日酔いが悪化するのか、そして精神科医の立場からの実践的対策を解説します。
筋肉量の低下が「酔いやすさ」を決める
加齢とともに、私たちの体は筋肉が減り、脂肪が増える傾向にあります。
筋肉は体内で最も水分を多く含む組織です。
また、アルコールは水に溶けやすい性質を持ちます。
そのため、筋肉量が少ないほど、同じ量のアルコールでも血中アルコール濃度が急激に上がりやすいのです。
2022年の研究では、55〜65歳の成人は20代と比べ、
・体内水分量が少ない
・酔いの感覚は同程度
・不快感は強い
という結果が示されています。
肝臓の解毒能力は年齢とともに低下する
アルコールは肝臓で分解され、その過程でアセトアルデヒドという有害物質が生じます。
これは頭痛・吐き気・動悸・不安感を引き起こし、二日酔いの主犯格です。
加齢により肝臓は縮小し、血流量は低下し、アセトアルデヒドの処理に時間がかかるようになります。
睡眠の質の低下が二日酔いを悪化させる
加齢により、
・体内時計(概日リズム)の衰え
・慢性疼痛
・夜間頻尿(特に男性)
・いびき・睡眠時無呼吸
などが増え、もともと睡眠は浅くなります。
アルコールは一時的に眠気を誘いますが、
・喉の筋肉を弛緩させ、いびきを悪化
・夜間覚醒を増やす
・深い睡眠を減らす
といった作用があります。
睡眠が悪ければ、二日酔いの回復も遅れるのは当然です。
また常習的な飲酒は、飲酒しない日でも睡眠の質を低下させます。
睡眠は脳内のGABAやメラトニンなどのシグナル伝達分子によって調節されていますが、アルコールは時間の経過とともにこれらの分子を阻害します。
さらに、長期研究では「適量」とされる飲酒習慣であっても、将来的な慢性不眠のリスクを高めることが示されています。
年齢に合った飲み方は?
・ 一気飲みを避け、ゆっくり飲む
・アルコールの合間に水分補給をする
・スポーツドリンクを飲むのも失われた電解質補給のため有効
・空腹で飲まない
・就寝直前の飲酒は避ける
「若い頃と同じ飲み方」を続けることが、実は最大のリスクです。
参考