10代の不安を和らげる「犬の力」──腸内細菌がつなぐ心と行動
本年もよろしくお願いします。
今回は、10代の不安や対人問題と「犬との生活」の意外な関係について、最新の科学記事をご紹介いたします。
■ 10代は「不安」と「社会性」が揺れる時期
10代は、脳の発達が急速に進む一方で、情緒の不安定さや対人関係の摩擦が増えやすい時期です。
・不安感
・イライラや攻撃性
・引きこもり傾向、学校への不適応
といった訴えで受診される中高生は少なくありません。
これまでも「ペットが心に良い影響を与える」という話は知られていましたが、今回の研究はその背景にある生物学的メカニズムに踏み込んでいます。
■ 犬を飼う10代は何が違うのか
研究を主導したのは、日本の 麻布大学の 菊水健史教授のチームです。
東京在住の343人の10代の若者を対象に、
・犬を飼っている群
・犬を飼っていない群
を比較しました。
心理評価の結果、犬を飼っている10代は
・攻撃性が低い
・非行的行動が少ない
・社会的引きこもりが少ない
という特徴が認められました。ここまでは「なるほど」と思われる方も多いでしょう。しかし本研究の核心はその先にあります。
■ カギは「腸内細菌」──脳は腸とつながっている
近年注目されているのが「腸脳相関」です。
腸内細菌は、神経伝達物質や炎症反応に影響し、不安・気分・社会性にも関与すると考えられています。
本研究では唾液・腸内環境の解析から、犬を飼う10代では特定の細菌(Streptococcus、Prevotella系)が多いことが分かりました。
さらに、これらの菌が少ない人ほど、
攻撃性や非行傾向が強い
という相関も確認されています。
つまり、犬との生活を通じて細菌が人に移行し、それが脳機能に影響している可能性が示唆されたのです。
■ 動物実験でも確認された「社会性の変化」
倫理的な理由から人への直接介入はできないため、研究チームはマウス実験を行いました。
犬を飼う10代由来の腸内細菌を移植されたマウスは、
・見知らぬマウスへの接触時間が長い
・困っている仲間に近づく時間が長い
という、より社会的な行動を示しました。
人とマウスを単純比較することはできませんが、腸内細菌が社会行動に影響するという仮説を強く支持する結果です。
■ まとめ:不安へのアプローチは「内省」だけではない
今回の研究は、心の健康が
脳だけで完結するものではなく、生活環境や生物学的要因と深く結びついている
ことを改めて示しています。
精神療法や薬物療法に加え、
人と動物の関係性という視点を持つことも、今後ますます重要になるでしょう。
「心を整える第一歩は、深い自己分析ではなく、犬に顔をうずめることかもしれない」
そんな示唆に富んだ研究でした。