マイスリーで認知症になる?
最近、睡眠薬「マイスリー(一般名:ゾルピデム)」が認知症リスクを高めるのではないかという話題が取り上げられることがあります。その背景には、グリンパティック・システム(Glymphatic System)という脳の老廃物除去機構の存在が関係しています。
グリンパティック・システムとは?
グリンパティック・システムは、脳脊髄液(CSF)を使って老廃物を洗い流し、神経細胞の健康を維持する重要な役割を果たします。特に睡眠中に活発に働くことが分かっており、睡眠の質が低下するとこのシステムの機能も低下する可能性があります。
マイスリーで認知症リスクが高まる?
結論から言うと、「マイスリー(ゾルピデム)が認知症を引き起こす」という主張は、現時点では科学的に確立されていません。確かに、一部の研究ではゾルピデムがグリンパティック・システムの働きを低下させる可能性が指摘されていますが、これは動物実験の段階であり、人間における明確な証拠はありません。
むしろ、不眠そのものが認知症リスクを高めることが広く知られています。慢性的な不眠は、脳の老廃物の蓄積を促し、アルツハイマー病やその他の神経変性疾患のリスク要因とされています。そのため、「睡眠薬を飲むことで認知症のリスクが上がる」という単純な因果関係は成立しません。
不眠は認知症リスクを上げる
長期間の不眠は、以下のようなメカニズムで認知機能に悪影響を及ぼす可能性があります。
1. アミロイドβの蓄積
アルツハイマー病の原因物質とされるアミロイドβは、睡眠中にグリンパティック・システムを通じて除去される。不眠が続くと、このプロセスがうまく機能せず、脳内に蓄積してしまう。
2. 神経細胞の修復機能の低下
睡眠中には記憶の整理や神経細胞の修復が行われる。
睡眠不足が続くと、認知機能の低下や記憶力の低下が進みやすくなる。
3. 慢性的なストレスと炎症
不眠はストレスホルモン(コルチゾール)の増加を引き起こし、慢性的な炎症を誘発する。
これが脳神経細胞にダメージを与え、長期的には認知機能低下のリスクを高める。
不眠よりは睡眠薬を飲んで眠る方が良い
不眠そのものが認知症リスクを上げる以上、「睡眠薬を使ってでも眠る方が良い」というのが現実的な考え方です。
「不眠で何日も苦しむ」よりは、適切な量を服用し、しっかりとした睡眠を取る方がメリットは大きいといえます。
眠れてきたら医師と相談しながら減薬を試みる
急にやめると反跳性不眠(リバウンド)を引き起こすことがあるため、少しずつ減薬する。
睡眠習慣の改善を並行して行う
規則正しい生活リズムを作る。
寝る前のカフェイン摂取を避ける。
スマホやPCの使用を控える。
その他:漢方併用も効果がある場合があります。
まとめ
・「マイスリーで認知症になる」というのはミスリード(科学的な証拠は不足)
・不眠そのものが認知症リスクを高めるため、睡眠の確保が最優先
・睡眠薬は適切に使えば、健康的な睡眠をサポートできる
・眠れてきたら、医師と相談しながら減薬を検討するのがベスト
参考
wikipedia Glymphatic_system
Norepinephrine-mediated slow vasomotion drives glymphatic clearance during sleep