「やりたいことはあるのに動けない」その心理と回復のヒント
年齢とともに「やる気」が落ちた気がするあなたへ
最近、「昔はもっとフットワークが軽かったのに」「やりたいことは頭にあるのに、体がついてこない」そんなふうに感じていませんか?
患者さんからも、「やりたいことがあるのに、億劫で動けない」「これって年齢のせいでしょうか?」というご相談をよくいただきます。
実は、これは年齢だけの問題ではなく、心と体のバランスが崩れているサインかもしれません。
「やる気が出ない」は自然なこと
年齢を重ねると、エネルギーの質が変わってきます。
20代・30代の頃のように一気に行動に移す力は少しずつ落ちていくものですが、それは衰えではなく「成熟」ともいえます。
しかし、それに気づかずに「以前の自分」と比較して自信をなくしてしまう方も多いのです。
以下のような要因が、「やりたいけど動けない」状態を作っているかもしれません:
慢性的なストレスや疲労
抑うつ気分
ホルモンバランスの変化(更年期、男性更年期障害など)
自分への過度な期待や完璧主義
心療内科・精神科外来では、いわゆる「やる気が出ない」「何をするのも面倒」という訴えは非常に多く、背景には以下のような状態があることもあります:
うつ病や気分変調症
意欲の低下、億劫感、楽しみの減退を認めるのが特徴です。
全般性不安障害
「始めたら失敗するのではないか」「ちゃんとできないかも」という思考が、行動のブレーキになっています。
発達特性や発達障害の傾向
タスクの優先順位付けやエネルギー配分が苦手で、結果的に先送りになるケースも。
これらの問題は、本人の「意思が弱い」せいではありません。専門的にアプローチすることで改善が期待できます。
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再び積極的になれる3つのステップ
1. 「小さく始める」ことにOKを出す
「やるならちゃんとやらなきゃ」「完璧にやらなきゃ」という思考は、意欲を殺してしまうことがあります。
まずは「5分だけやってみる」「道具だけ出してみる」「途中でやめてもいい」といった**スモールステップ**から始めてみましょう。
2. 体を動かすと、心も動く
運動がメンタルに与える効果は、近年の研究で繰り返し示されています。
朝のウォーキング
ラジオ体操
ストレッチや深呼吸
体が動くことで、脳内に「ドーパミン」「セロトニン」などの神経伝達物質が分泌され、自然と意欲が高まってきます。
3. 「自分を応援する言葉」を持つ
やる気が出ないとき、自分を責めていませんか?
「またできなかった」「怠けてるだけかも」ではなく、
「少しでも前に進めたらOK」
「昨日より1歩だけでもいい」
といった自己肯定感を高める言葉を、意識的に使ってみてください。脳は繰り返される言葉に影響を受けます。
それでも動けないときは、一度ご相談を
もし「何をしても気分が晴れない」「寝ても疲れがとれない」「楽しさを感じない」などの状態が2週間以上続いているようであれば、それは心の不調かもしれません。
精神科や心療内科では、「やる気が出ない」「最近消極的」という悩みに対しても、薬物療法・精神療法・カウンセリングなどを組み合わせてサポートが可能です。
まとめ:積極性は「戻す」のではなく「育てる」
「以前のような自分に戻りたい」と思う方も多いかもしれませんが、年齢や経験を重ねた今だからこそできる「自分なりのアクティブさ」もあります。
無理に過去に戻るのではなく、今の自分に合った方法で「心のスイッチ」を入れていく。そこから、また自然と動き出せる日がやってきます。