妊婦さんは暑さから守られる必要がある
昔からお越しくださっている患者さんの中に、今年から妊娠中の患者さんがいらっしゃいます。
また、The Economistの記事でこんなタイトルがありました。
Pregnant women need protecting from heatwaves
妊娠中に「避けるべきもの」としてよく知られているのは、喫煙やアルコール、特定の魚に含まれる水銀などです。
ところが、最近の研究で新たに注目されているのが「暑さ」のリスクです。
暑さは母体と赤ちゃんにどう影響するか
妊娠中は代謝が活発になり、体温が上がりやすく、心臓にも負担がかかります。そのため、高温環境に弱くなります。
実際に世界中の大規模研究で「気温が1℃上がると早産のリスクが約4%増える」と報告されています。
さらに熱波のような極端な暑さは、早産や死産、胎児の発育異常、妊娠糖尿病や妊娠高血圧腎症といった母体への合併症にも関係することが分かっています。
メンタルヘルスとの関連
精神科医として気になるのは、暑さが妊婦さんの 心理的ストレスを強める点です。
「赤ちゃんに悪影響があるかも」と不安になったり、睡眠不足が続いたりすると、気分の落ち込みや不安障害につながることもあります。
つまり、暑さは身体だけでなく心の健康にも二重の負担をかけてしまうのです。
実践できる工夫
・エアコンや扇風機をうまく使い、室温を快適に保つ
・水分をこまめにとる
・日中の外出はなるべく避け、朝夕の涼しい時間帯に予定を入れる
・体調不良を感じたら早めに医療機関へ相談する
経済的な理由や生活環境によって冷房の使用が難しい方もいると思います。そうした場合でも、窓にすだれをかける、日陰を活用するなどの小さな工夫が助けになります。
さいごに
気候変動の影響で、来年以降もさらに暑い日が増えていくと予想されています。
妊娠中の方が安心して過ごせるように、医療者だけでなく社会全体でサポート体制を整えることが必要です。
妊婦さんご本人やご家族にとって「暑さ対策」は喫煙や飲酒と同じくらい大切なセルフケアだと覚えておいてください。