「よく寝る人ほど健康」は本当? ― 長すぎる睡眠が死亡リスクを高める理由とは
「睡眠は長ければ長いほど良い」と思っていませんか?実は近年の研究では、長すぎる睡眠(1日9時間以上)が、意外にも健康リスクを高め、死亡率を上昇させることが明らかになっています。
今回は、その根拠となる最新の医学論文をもとに、長時間睡眠と病気・死亡リスクとの関係について解説します。
🧪 最新研究が示す「睡眠時間と死亡率」の関係
2025年に発表された国際的なメタ分析(Ungvariら、GeroScience誌)では、世界中の大規模な疫学研究をもとに、睡眠時間と全死亡リスクの関係を調べました。
その結果がこちら:
睡眠時間が7〜8時間の人 → 最も死亡リスクが低い
7時間未満の人 → 死亡リスクが14%増加
9時間以上の人 → 死亡リスクが34%増加(特に女性で顕著)
つまり、「睡眠時間が長すぎても短すぎても、リスクが高くなる」というU字型の関係が確認されたのです。
🩺 長時間睡眠で増える病気のリスクとは?
研究では、長時間睡眠者に以下のような病気が増えやすいことがわかっています。
1. 心臓病・脳卒中
心筋梗塞や脳卒中など、致命的な心血管疾患のリスクが上昇します。
2. 糖尿病・肥満
長く寝ている人は活動量が少なくなり、代謝異常や肥満、糖尿病のリスクも高まります。
3. うつ病・認知症
寝すぎは精神的な不調のサインであることも。実際、うつ病や認知機能の低下との関連も報告されています。
4. 慢性炎症・免疫異常
睡眠の質が悪いまま長時間寝てしまうと、体内に慢性の炎症反応が起きやすくなるとも言われています。
😴 なぜ「寝すぎ」で不健康になるのか?
体内時計の乱れ:過眠によって生活リズムが崩れ、体調や精神状態にも影響が出ます。
潜在疾患のサイン:無呼吸症候群やうつ病、認知症の初期症状として「寝すぎ」が現れることもあります。
生活習慣の乱れ:運動不足や社会的孤立などが重なると、さらに悪循環になります。
✅ 健康的な睡眠を保つためにできること
毎日7〜8時間の安定した睡眠を心がけましょう
寝だめや昼夜逆転は避け、朝起きる時間を一定にするのが効果的です
日中に体を動かすこと(軽い運動や散歩)も、夜の質の良い睡眠につながります
「寝すぎる日が続く」「日中も眠い」などの場合は、疾患が隠れている可能性もあるため、当科を含めた受診をご検討ください
📝 最後に:睡眠は「長さ」だけでなく「質」も大切
「睡眠は大切」とよく言われますが、実際には長ければいいというわけではないのです。
過眠もまた、身体やこころのサイン。適切な睡眠習慣を整え、自分の体の声に耳を傾けてみましょう。
睡眠についてのご相談があれば、当院でもお気軽にお尋ねください。
【参考文献】
World Health Organization: Sleep and Health