"身体症状症と病気不安症:似ているようで違う二つの病態"
今回は「身体症状症」と「病気不安症」の違いについてお話しします。
これらは、一見似ているように思えますが、本質的には大きな違いがあります。
まず「身体症状症」は、患者さんが具体的な身体的な症状(頭痛、胸痛など)を訴え、その原因が医学的には説明できない状態を指します。病的な所見が見つからないにも関わらず、患者さんは日常生活に影響を及ぼすほどの身体的な症状に苦しむことが特徴です。
ストレスや心理的な問題が身体に反映されることがよくあります。
一方、「病気不安症」は、患者さんが自身が重篤な疾患に罹患していると過度に心配し、その心配が適切な医学的評価や安心する情報にもかかわらず続く状態を指します。これは「健康への過度な恐怖」が特徴で、患者さんは常に自身の健康状態について不安を感じ、検査結果が陰性であっても安心できません。
これら二つの病態は一見似ていますが、重要な違いは「身体の症状」に対する焦点がどこにあるかです。身体症状症では「身体の症状」自体が主な悩みであり、その症状により日常生活に影響を及ぼします。対して、病気不安症では「病気になるかもしれない」という「不安」が主な悩みであり、具体的な症状は必ずしも存在しないか、あってもそれ自体はそれほど強くないことが多いのです。
治療においても違いがあります。身体症状症の治療では、身体的な症状を管理する方法や、ストレスや心理的な問題をどう扱うかに焦点を当てます。一方、病気不安症の治療では、不安を管理する方法や、健康に対する思考の誤りを修正することに焦点が当てられます。
どちらの病態も深刻な苦痛を引き起こし、患者さんの日常生活に大きな影響を及ぼすことがあります。適切な理解と治療が必要です。身体的な症状に悩まされている方、または自身の健康について過度に心配している方がいらっしゃいましたら、ぜひ専門家に相談してください。安心と適切なケアが提供されます。