先生、お薬を飲まない副作用はありますか?

先日、私はある患者さんを診察していました。お薬に不安があった様子で、
「このお薬の副作用は何ですか?」
「この睡眠薬の副作用は何ですか?」
などお薬の副作用についてのいくつかの質問を受け、それにひとつづつ答えていました。

そしてついに驚くべき一言を耳にしました。その患者さんがこう質問しました。

「先生、お薬を飲まない副作用はありますか?」

この質問には一瞬、驚いたものの、患者さんが伝えたかったのは、処方されたお薬を飲まない場合にどんな影響があるのか、ということだと理解しました。

患者さんは、うつ病の治療の一環として処方されているお薬を服用していましたが、副作用を恐れていて、薬を飲むことをためらっていました。しかし、患者さんが理解していなかったのは、処方された薬を飲まないこと自体が「副作用」を引き起こす可能性があるということです。

私は患者さんに対して、うつ病を放置すると、うつ症状などの悪化や自殺のリスクが高まる可能性があるとを説明しました。これは、薬の副作用が引き起こすリスクよりもはるかに重大な問題です。薬を飲まないことで、病気が進行し、それが新たな「副作用」を引き起こす可能性があるということを、理解してもらいました。

このエピソードを通じて、私は医師として患者さんに対し、治療法の選択についての情報提供だけでなく、それを適切に理解し、適切な行動をとることの重要性を教える役割も持っていることを再認識しました。患者さんが、自分の健康を自分自身で守るための最善の行動をとることができるように、医療者としてサポートすることが求められています。

結局のところ、医師は、病気の診断と治療だけでなく、患者さんが自身の健康に対する理解と自己管理能力を向上させることにもあります。このエピソードが、皆さんにとって何か一つでも新たな視点や洞察を提供できれば幸いです。