「運動がめんどくさい」あなたへ。1日わずか数分の“運動スナック”が心と体を救う理由
「運動スナック(エクササイズ・スナック)」とは、1回1〜5分程度の短い運動を、日常のスキマ時間に「おやつ感覚」で小分けにして行う新しい運動スタイル
日々の診察の中で、私は患者さんに「少しずつ体を動かしてみませんか?」とお話しすることがあります。運動がメンタルヘルス、特にうつや不安の改善に良い影響を与えることは、今や医学界の常識だからです。
しかし、そう言われると、多くの患者さんはこうおっしゃいます。
「先生、分かってはいるけれど、ジムに行く気力なんてないよ」
「毎日忙しくて、まとまった時間をとるなんて無理です」
うつ状態の時や、日々の仕事で疲れ果てている時に、「週に150分のウォーキング」などという高い目標を掲げられると、それ自体がプレッシャーになり、できなかった時に自分を責めてしまう原因にもなりかねません。
そんなあなたに、今日はとても心が軽くなる医学的知見をご紹介します。実は、「まとまった運動」をしなくても、日常生活の中での「ほんの数分の動き」だけで、私たちの健康は劇的に改善することが分かってきたのです。
根拠となる2つの重要論文
世界的な経済誌『The Economist』でも紹介された、信頼性の高い研究データを2つお伝えします。
① WHOの基準に届かなくても死亡リスクが20%低下
2015年に医学誌『JAMA Internal Medicine』に発表された、約66万人を対象とした大規模なメタ分析(複数の研究を統合した解析)があります。
この研究では、WHO(世界保健機関)が推奨する「週150分の中強度運動」に全く届かないレベルのわずかな運動であっても、完全に運動をしない人と比較して、死亡リスクが20%も低下することが示されました。運動はやればやるほど効果はありますが、最もリターンが大きい(健康効率が良い)のは、「ゼロからほんの少し始める」その一歩なのです。
② 1日わずか4.4分の“日常のダッシュ”で死亡リスクが30%低下
さらに驚くべきは、2022年に『Nature Medicine』に掲載された、ウェアラブル端末(活動量計)を用いた最新の研究です。
この研究では、普段まったく運動の習慣がない約2万5000人を対象に、日常生活の中での「短く激しい動き」(VILPA:日常的間欠的激しい身体活動)を測定しました。例えば、バスに遅れそうで走る、階段を急いで上る、といった動きです。
その結果、1日平均わずか4.4分(1〜2分の細切れの動きを1日3回など)行うだけでも、全死亡リスクやがんによる死亡リスクが約30%も低下することが判明しました。
“運動スナック”で心を整える
この「数分の細切れの運動」はこれらを「運動スナック(Exercise Snacks)」と呼ぶこともあります。
お湯が沸くのを待つ間に、その場でスクワットを5回する
駅のエレベーターを使わず、階段を少し早足で上ってみる
退屈なオンライン会議の合間に(カメラをオフにして)、その場で軽くジャンプしてみる
これだけで良いのです。運動スナックとメンタルヘルスの直接的な因果関係を表す論文はないのですが、「これなら自分にもできた」という小さな成功体験は、脳の報酬系を刺激し、自己肯定感を高めます。また、一瞬でも心拍数を上げることで脳の血流が良くなり、気分をスッキリさせる神経伝達物質の分泌も促されます。血糖値の安定や心肺機能の向上の効果が期待でき、結果的にメンタルヘルスに良い影響を与えるのではないかと感じています。
「完璧な運動」を目指して挫折するよりも、日常の隙間に「運動スナック」をつまみ食いする。そんな気楽な気持ちで、今日から試してみませんか?
あなたの心と体が少しでも軽くなるお手伝いができれば幸いです。何か気になることがあれば、いつでも吉本メディカルクリニックにご相談ください。