寝る前のブルーライトカットは本当に睡眠に効く?「色」よりも重要なこと

ブルーライトのせいで眠れない?

診察室で患者さんから「寝る前にスマホを見てしまうのですが、ブルーライトのせいで眠れないのでしょうか?」というご質問をいただきました。

ブルーライトとは、波長が480ナノメートル(nm)付近の目に見える光(可視光線)の中で、最も波長が短く強いエネルギーを持つ青い光です。

パソコン、スマートフォン、タブレットなどの液晶画面やLEDディスプレイから発生し、就寝前に浴びると睡眠ホルモン(メラトニン)の分泌が抑制され、睡眠障害の原因になると言われています。

「ブルーライト=睡眠の敵」というイメージにて、メガネやフィルターアプリを愛用されている方がいらっしゃるかと思います。しかし、最新の科学的知見を紐解くと、私たちが思っているほど「青い光(ブルーライト)」だけが諸悪の根源とは言えないことが分かってきました。

今回は、根拠となる研究論文をご紹介しながら、寝る前の「光」との正しい付き合い方について解説します。

なぜ「ブルーライトが悪い」と言われるのか?

私たちの脳には体内時計があり、朝に目覚め、夜に眠くなるリズムを作っています。目の網膜にある特定の細胞(メラノプシンを含む細胞)は、「ブルーライト」に特に強く反応します。この光を浴びると、睡眠を促すホルモン「メラトニン」の分泌が抑えられ、脳が覚醒モードになります。

この生理学的な仕組み自体は事実です。しかし、「日常生活での影響」となると話は変わってきます。

論文で見る「寝る前の画面使用」の実際

画面の光と睡眠に関する代表的な研究論文をいくつかご紹介します。

1. 暗闇で4時間画面を見ると?

  • 引用論文Chang et al., Proceedings of the National Academy of Sciences (PNAS), 2015.

  • 内容:暗い部屋で就寝前に「電子書籍(タブレット)」を読むグループと「紙の本」を読むグループを比較しました。

  • 結果:電子書籍のグループはメラトニンの分泌量が約50%減少し、入眠が遅くなりました。

  • 解説:一見すると「やはり画面は危険」に見えますが、この実験は「暗闇で4時間連続して画面を見る」という日常生活ではかなり極端な条件で行われています。それほど過酷な条件でも、寝つきが遅れたのは平均わずか10分程度でした。

2. 日中に光を浴び、2時間の読書なら?

3. ブルーライトカットメガネの効果は?

「どのくらいの明るさ・時間なら安全か」の論文はある?

オックスフォード大学の体内時計神経科学者ラッセル・フォスター教授が指摘するように、実験室の極端なデータから日常の睡眠をそのまま推測することはできません。

では、「具体的に照度何ルクスで、何分間なら睡眠に影響が出ないのか?」という明確な基準を示した根拠論文はあるのでしょうか?

結論から申し上げますと、現時点では「これ以下の明るさ・時間であれば絶対に安全」と断言できる明確な臨床研究論文はありません。

精神科医からのメッセージ:「色」よりも「明るさ」

研究から分かる大切なことは、「青い光かどうか」という光の色(波長)にこだわりすぎるよりも、光全体の「明るさ(照度)」と「刺激の強さ」が重要であるということです。

いくらブルーライトカットメガネをかけていても、画面自体が明るすぎたり、SNSや動画で脳を興奮させてしまっては睡眠の妨げになります。

【今日からできる睡眠ケア】

  1. ブルーライトカットグッズに頼りすぎない

  2. 就寝前は部屋の照明や画面の明るさを「できるだけ暗く」設定する

  3. スマホを見る場合は、不安や興奮を煽るコンテンツを避ける

睡眠でお悩みの方は、光の「色」にとらわれすぎず、まずは夜の部屋と画面の「明るさ」を落とすことから試してみてくださいね😴

参考
Should you avoid blue light before bed?(The Economist)

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